アルザスとロレーヌの境に位置するドノン山(1,009m)は、ヴォージュ山脈北部にそびえる山です。小さな列柱の神殿を頂いた特徴的な姿は、遠くからでもすぐにわかります。この砂岩の山は古代から信仰の場であり、それが「聖なる山」と呼ばれるゆえんです。訪れる前に知っておきたいポイントをご紹介します。
ドノン山はどこにある?
ドノン山はバ=ラン県、シルメック(ブルッシュ渓谷)とサールブールの間、ロレーヌとのすぐ境にあります。標高は1,009m(地図によっては1,008m)で、山脈北部にあたる「砂岩のヴォージュ」の最高峰です。ただし、ヴォージュ山脈全体の最高峰(グラン・バロン、1,424m)でも、バ=ラン県の最高峰(シャン・デュ・フー、1,099m)でもありません。
ドノン峠(約727m)を通る道路を使えば、山頂近くまでアクセスできます。ロレーヌ側では、サール川の二つの源流、白サール川(サール・ブランシュ)と赤サール川(サール・ルージュ)がこの山塊から流れ出し、下流で合流して一本の川になります。
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古代から続く聖なる山
ドノンという名は、高台と砦の両方を意味するケルト語のdunに由来するといわれます。人が暮らした歴史は古く、山頂はまずガリア人の信仰の場となり、ガロ・ローマ時代には、この地方で最も崇められた神メルクリウスを祀る聖域となりました。
発掘調査では奉納石碑や彫刻が見つかっており、その中にはメルクリウスや、山の守護神でヴォージュの名の由来となったウォセグス神の像も含まれます。これらの遺物の多くは現在、各地の博物館に収められており、とくにストラスブール考古学博物館ではドノンのガロ・ローマ聖域からの出土品を見ることができます。
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山頂を飾る小さな列柱の神殿は、実は古代のものではありません。1869年、ナポレオン3世の時代に建築家ルイ=ミシェル・ボルツが、現地で見つかった彫刻石を収める博物館として建てたものです。石の遺物はその後博物館へ移されましたが、建物はいまもドノンの象徴であり、多くのハイカーが目指す場所となっています。
1870〜1871年の戦争の後、フランクフルト条約で定められた新たな独仏国境はドノン山を通っていました。そのため1918年まで、この山は併合されたアルザスとフランスを隔てる目印となっていたのです。
ドノン山の山頂へ登る
最もよく使われる登山ルートは、ドノン峠周辺から出発します。クラブ・ヴォージアンが標識を整備した道は森の中を登り、はじめはやや急で、やがてつづら折りになり、岩陰の避難所の近くを通って山頂の岩場へ出ます。登りは1時間弱が目安です。全長約5km、標高差265mの定番の周回コースは、休憩を含めて約2時間15分で歩けます。
- 山頂:神殿、彫刻のある石碑、解説パネル、方位盤があります。
- パノラマ:晴れた日にはヴォージュの稜線、ロレーヌ台地、そして東にアルザス平野まで見渡せます。
- 装備:岩や木の根があるので歩きやすい靴を。山頂は風が強いため、夏でもウィンドブレーカーがあると安心です。
- ベストシーズン:5月から10月。ブナ林が黄金色に染まる秋はとくに見事です。冬は道が雪や氷に覆われることがあります。
訪問のアドバイス
登り、山頂での散策、下りを含めて半日ほど見ておきましょう。さらに楽しみたい方は、アルザス側のブルッシュ渓谷を訪ねたり、ドノンの石碑が展示されているストラスブール考古学博物館に足を延ばしたりするのもおすすめです。安全のため標識のある道を外れず、遺跡を大切にしてください。この繊細な考古遺跡は、二千年近くにわたって受け継がれてきたものです。

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